NLPってどんなもの?
そもそもNLPってどんなものなんでしょう?
カウンセリングやコーチング、コンサルティングの現場だけではなく、ビジネスや医療の現場でも耳にすることが増えてきたNLPですが、いざその理解について確認すると『よく分からない』という方が多いようです。
ここでは、まず簡単にNLPの歴史と背景、NLPならではのユニークな視点、そしてNLPの持つ魅力についてお伝えしたいと思います。
これから学ぼうと思っているNLPの生まれや、NLPが目指したものを知っておくことは、あなたにとってのNLPの可能性を知る上でも大いに役立つと思います。
◆NLPが生まれた背景
NLPは、1970年代の初め頃から始まった、『人のパフォーマンス』に関する研究です。
アメリカの西海岸カリフォルニア州にある、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(University of California Santa Cruz)が発祥の地。
私(鈴木)も以前何度か訪れたことがありますが、緑豊かな丘陵に広々としたキャンパスが広がり、その中を鹿やリスが走り回っているという、いかにもアメリカの大学といった牧歌的な魅力を感じる場所です。
当時のアメリカは、大きな変革の時期でした。これまでの価値観が大きく揺らぎ、新しいライフスタイルを求める動きが起きていました。
中でも西海岸、特にカリフォルニア州はその中心的な場所でした。東洋的なものと西洋的なもの、心と体、精神文化の導入等々、いろいろな視点から人の生き方が見直され、さまざまな実験的なアプローチが行われていました。
あなたはヒッピーという言葉を耳にしたことがあるでしょうか。ハリウッド映画の中にもその当時の様子が垣間見られるものがたくさんあります。『フォレストガンプ』や『フィールドオブドリームス』といった映画の登場人物の会話の中にも当時の様子が見受けられます。
◆NLPが目指したもの
当時カリフォルニア大学サンタクルーズ校に在籍していた二人の人物、リチャード・バンドラー氏と、ジョン・グリンダー氏の二人がNLPの開発者です。
新しい価値観が台頭してくる変化の時期に、彼らが関心をもったのは、『優れた結果を創り出す人』と『そういうことができない人』の違いとは何かということです。
そして、彼らによって行われた、さまざまな領域におけるハイパフォーマーとそうでない人との間の違いの比較・体系化の研究からNLPはスタートしました。
NLPはこの両者の違いは何か。さらに『うまくいっていない人』が、『ハイパフォーマー』になるには何が必要なのかを明らかにしようとした研究、といっても良いでしょう。
◆NLPならではの視点
その研究を進めていく上で彼らには、いくつものユニークな視点や考え方がありました。
例えば、『私たちの誰もが成果を上げている達成者である。けれどもそこには、望む結果を創り出しているか、望んでいない結果を創り出しているかという大きな違いがある』というのもその一つです。
何もできていないというわけではない、ただその思いとは逆に、いつも望んでいる成果とは違う結果を創ってしまっている人がたくさんいる、というわけです。
ちょっと面白い発想ですが、なるほどと思わされる考え方でもありますね。
私たちが実際に現実に対して影響を与えるのは、基本的には自分の振る舞いや行動によってです。中には想念の力を使い、念じるだけで現実を変えることができる人もいるかもしれません。が、その数は決して多くはないはずです。
NLPの開発者の二人は、それをさらに一歩踏み込んで考えました。
人が現実に対して影響を与える、外的な振る舞いや行動に大きく影響しているのは、実は本人が心の中で物事をどう捉えているかということ。
本人も気づいていない、この無意識のうちに心の内で行っている『情報の組織化』『物事の捉え方や考え方』の仕組みに注目しました。
このことはNLPの大きな特徴の一つです。そういう意味では、NLPは人の無意識レベルの構造の研究ともいえます。
◆無意識のはたらきと自分の世界
ここでは内的な情報の組織化について、あまり難しくなり過ぎないように気をつけながら、もう少し詳しくお伝えしていきましょう。
それは、ものごとに対するその人なりの理解や認識をつくり出す基になっている、無意識レベルでの情報処理のプロセスのことです。
私たちひとり一人が無意識の心の中で、自分を取り巻くできごとの『何に』『どのように』注目を当てるかによって、人それぞれに異なった独自の事実(経験)が生まれます。
そして、私たちは既にこれまでの自分の経験の中で、誰もが自分なりの情報の組織化の方法を身につけています。言い換えると、自分流の『認知のスタイル』を持っているということです。
だから、同じ環境にいても『あの人は全然平気そうなのに、私にはがまんできないくらい辛い』とか、『私には当然と思えるアイデアが、あの人には全然理解してもらえない』といった複雑で面倒な現実が数限りなく起きてしまうわけです。
私たちの経験とは、その人なりに加工された独自の情報の世界ともいえます。
NLPはその人らしさを規定している、この複雑な情報の組織化のプロセスをわかりやすく解き明かそうとした試みでもあります。そういう点ではNLPは認知心理学的であるともいえます。
◆NLPの持つ大きな可能性
私がNLPに出会ったのは、自分がまだ大学生だった20歳過ぎの頃ですから、ほぼ40年近くも前になります。
まだ若いということもあって、思い通りにならない自分の生き方を変えるために、自分も気づいていない無意識のレベルでいろいろと変化を作るというNLPの考え方はとても不思議で、刺激的なものでした。
なによりも、NLPを学ぶことで、苦しい努力とは別のレベルでどんどん変わっていく自分自身に驚いたものです。
『コミュニケーションの改善』『自分自身への気づき』『他者の肯定的な理解』『行動力の向上』『相手への影響力の拡大』『おだやかな心の安定』等々、NLPを通して得られるメリットには本当にたくさんのものがあります。
その一つ一つのどれもが、私たちが日常を生きていく上でとても身近なものであり、無視できない大きなテーマになるものばかりです。
NLPは、私たちが自分らしく、満たされて生きるために必要なことに加え、周りとの協調的で創造的な関係を創り出すために必要な貴重なヒントを与えてくれるものです。
ここ何年か、『幸福学』『ポジティブ心理学』『マインドフルネス』といった、心のあり方と積極的に向き合っていく発想が一般化してきました。
NLPは1970年代の開発期からそれらの発想を含んでいました。この先進性はいまだに色あせることなく、価値のあるものです。NLPの学習者として、私もうれしく感じている部分です。
そしてNLPはそれを学ぶために、莫大な時間や過度な労力を必要とするものではありません。好奇心を持ちながら比較的短時間で、自分が想像していなかった大きな変化のヒントを得ることができるという魅力をもっています。
これらのことがNLPが誕生して以来、短い期間のうちに世界の多くの国の人たちを魅了した理由の一つでもあると思います。
◆NLPのこれからについて
そして最近では、NLPが経験則的に検討、提供してきた考え方やスキルが、脳科学や体の仕組み、遺伝子の働きという方向からも再評価され始めています。
NLPが誕生したのが1970年代。まだ50年という比較的若い学問ですが、きっとこれからも世の中の新しい発見や研究を取り込みながら、開発者の視点を超えた発展をし続けていくと思います。
今回はまず『NLPってなんだろう?』ということについて、短くまとめてお伝えしました。
あなたにとって、NLPの持つ魅力や可能性を理解する一助になっていればとてもうれしいです。